見える (6月15日(日)14時23分59秒)

私の目に映るもの
踊る風、落ちる星空
走る葉脈、歌う雨粒
息づく虫達、啄む鳥たち
そして、嘘をつくあなた
その優しい嘘が、はっきり見えた
私の目に、雨粒

目(詩) (2003年06月23日 (月) 03時06分)

あなたの綺麗な目
初めて世界を見た赤ん坊のような
一途に南を目指す渡り鳥のような
大きくて綺麗な目

わたしのきつめの目
苛立ちを抑えきれない子供のような
縄張りを必死に守る狼のような
小さくてきつめの目

あなたは自分の目を嫌ってる
「優しすぎて男らしくない」って
わたしも自分の目を嫌ってる
「優しくなくて女らしくない」って

そしてお互いに羨ましがっている

「その目が欲しかった」

その目も欲しいけど、
わたしはもっと欲しいものがある
目はいつか、輝きを失ってしまうかもしれないけど
それは、いつまでもわたしの中で光っているだろう
眩く透明な気持ち 永久不変な

あなたはどうなの?
他に欲しいものはある?
私の目を欲しがるなら、
本当はあるんでしょう?

でも、それに気がついたとしても
お互いに羨ましがるだけだろうけど

「あなたが欲しかった」

静かに (詩) (2003年06月25日 (水) 03時19分)

今、限りなく静かに
ここにいる

今、外では
雨粒一つ一つの気配が、上から下へ
鉄琴の音のように、すとんと落ちる

今、窓の外を見れば
見て見ぬふりをして走る水滴たちが
ちらちらと私を見て、笑う

今、部屋を暗くして
何も考えずに目を瞑ると
ほんの少しの間、世界とひとつになる

今、限りなく静かに
ここにいる

こっそりと
微笑みあってる


と世界

閉ざされた中、平穏の踊り (2003年06月30日 (月) 01時07分)

一人踊る、変わらないステップを踏んで
一歩、また一歩
厚い窓からは美しい光が、七色の筋となって差し込む
暗い部屋の中、一人踊る私の
足元にわだかまって
まるでそれが、全てであり、永遠であるかのように
それでもそれは、過去の光であり
見えたとしても、私の影を映したとしても、
もうそこにはないから、触れることも出来ない
それでも、私は
埃の匂いがたちこめ、床板がきしみ、
そして夕日が差すこの部屋の中で、
踊り続ける
変わらないステップを踏んで
一歩、また一歩
  

(ゴルトベルク変奏曲BWV988:アリア)

夏の雨 投稿者:utai(超短編小説) MAIL (2003年07月02日 (水) 22時06分)

雨が来るよ」とあなたは言った。
確かに、遠くにそんな感じの雲が見える。
黒く渦巻いた夏の雲が、ゆっくりゆっくり近づいているようだ。
「来そうだね」とわたしは答えた。
それっきり会話はなく、二人でまた立ち尽くす。
青く低い空が、重い雷雲に喰われていく。
先ほどまであれだけ燦燦と照りつけていた太陽も、なすすべなく覆われていく。
黄色い日の光は頼りなく、地上にスポットを作るのみ。
いっぱいに花開いて、枯れそうになっている向日葵も、空をぼんやりと見上げている。
私の手を握る湿ったあなたの手も、もう枯れそうなのかもしれない。
ひと時の雷雨では、手遅れ。

ぽつん、と最初の一滴が降ってきた。
するともう、際限なく、次から次へと降ってくる。
からからのアスファルトが、みるみるうちに濃い鼠色に変わっていく。
容赦なく降り注ぐ、大きな冷たい雨粒。
地上の乾いたもの全てに滲みこむ恵みの雨。
私にも恵みを?
あなたにも恵みを?
等しく与えてくれれば、また青々とした葉を茂らせることができるかもしれないのに。

私たちは黙って立ち尽くす。
服が水を吸い込んで、ひどく重い。
首、肩、背中、繋いだ手、
順に雨粒が滑り降りていく。
それでも、私は何も言わない。あなたも何も言わない。
ただ立ち尽くして、空を見上げる。
昔、誰かが言った。
「雨や雪が降っているときに空を見上げると、飛んでいるみたいだね。」
人は飛ぶことに憧れるのに、地上には興味を示さない。
そこには、自分の影があるから。
見たくないものがあるから。
だから私たちは、空を見上げる。
こうやって、枯れかけた手を繋いで。

でも、雨の日なら地上を見ることだって出来るはず。
影を見なくてすむから。
結局目をそむけるのは、今という真実を見たくないからなのかもしれない。

雨脚が少しずつ弱くなっていく。
仕事を終えた雷雲が走り去っていく。
待ちわびたように雲の輪郭を縁取る金色が、ひどく綺麗で、
地上に降ろされた幾つもの光の柱が、ひどく神々しくて、
しばし、その光景に全てを委ねた。
終わりが間近に迫っている。
この雲がすべて走り去ったときには、ここには誰もいないだろう。
私たちは、その時を分かっている。
でも。
この光が世界全体を照らすまで、もう少しだけ、二人でいよう。
もう少しだけ、手を繋いで立ち尽くそう。
そして、どちらからともなく手を離して、笑って、
止まった二人の時間を元に戻そう。
あの別れ行く雲のように。

涙の海 (その他)(2003年07月13日 (日) 01時29分)

暗夜を手探りで進むように、涙の海を渡りましょう。
夜明けが来る前に、海に放り出されないように、
この細い帆柱にしがみついて。

恐れが波を呼び、波は影を呼び、
影は心に入り込んで、食い破ろうとするでしょう。
どうか、その正体に気がついてください。
その影の匂いや手触りを、思い出してください。
そしたら、しっかりと目を見開いて、
泡粒一つ一つが輝く真実を見届けてください。
この旅は、決してあなたを殺そうとしているのではないのです。

やがて、雲が海に落ち、
空と海の境目から、眩いばかりの朝が生まれるでしょう。
朝はその懐にあなたを招き、
あなたを労い、
あなたを愛してくれる。
あなたはただ、信じていれば良いのです。
朝があなたを信じていることを。

涙の海を渡りましょう。
全てに課せられた、逃れられぬ海を。
灯台も星明りも、当てにならないけれど、
あなたは、朝を描ける。
涙の海を渡りましょう。
ただひとつ、朝を信じて。

utai的「神化論」 (プチエッセイ)(2003年07月14日 (月) 00時39分)

 私は正直な話、神はあまり好きではない。宗教は否定しないし、神に従う人を蔑むわけでもないが、私は、神という存在が受け入れられない。私にとっては必要ない気もする。
 神は正しい道を示すだけ示して、人は其れに縋り、「信じれば、救われる」と声高に唱える。実際は信じただけでは何も起こらないのに。神が示した道を選択肢に加えるのは、まあいいと思う。でも、その道しか見ないで進むのはどうだろう。だって、神が正しいと思った道は、自分にとって正しいとは限らない。自分が納得しないなら、神の作った正しい道を進んでも無意味じゃないか。私は、神に道案内してもらうよりも、選択肢のありすぎる迷路の中から、自分で道を選びたい。
 私は寧ろ、生きているもの一つ一つが本当の神なのではないかと思う。何かを生み出して、作って、考えて、行動して、愛して、生きて、死んでいく。もう、ここまで出来れば神だろう。特に人間は成熟した神だと思うのだけれど、だからこそ不安定で、何か絶対的なものをほしがっている。本当は、其れが必要ないくらい逞しい心を持っているのに。
 大切なのは、それに気がつくことだ。もう縋るものがなくても、みんなで立ち上がって歩いていける。散々迷って、壁にぶつかって、時には間違っても、そこからまた道を歩いていければいいのではないか。完全な終わりはなく、終わったように見えたのが始まりだったりする奥が深い世の中だから。少なくとも私は、「神離れ」して現人神のひとりになりたい気がする。


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