千日回峰 (詩)(2003年05月01日 (木) 15時41分)

デジャ・ヴュに誘われて
今夜
山々を渡っていく
都のにぎわいもかなた
孤独の足音が
先を歩き
偶然と必然のはざ間
夜と朝の記憶を
記録すべきために拾った
森でうち捨てられたヘルメットに
退役まであと59日のピリオド
孤独は振り向きもせず
先を急いだ

壊れた街 スネ夫(詩) (2003年04月29日 (火) 23時02分)

恋人の街  行き交う人の
絡めた指に  とまどう視線

両手を隠す  ポケットの中
握りしめてた  壊れたあの日

はずむ足音   笑い声
耳をふさごか  この指で

信号待ちの   交差点
つまずきそうな 影だけ伸びて
一人で歩く   思い出の街

天使 (詩)(2003年04月28日 (月) 15時43分)

夜の残りを啜るがゆえ
彼女は天使と呼ばれます
ニンジン嫌いの子供のよう
ガイジン嫌いの東の果で
より分けられたお皿の上
やまと言葉の源氏名に
天使の語る夜物語


チキンレーサー (超短編小説)(2003年06月05日 (木) 17時07分)

 夜の工事現場で知り合った男と、ダンボールに入ったグラスウー
ルを二人で引きずる。
 南口の搬入路のスロープで春はまだ寒かった。
「オレ10代の匂いってのがたまらなくイヤなんだ」と男が言う。
 右指の関節には護身用のごついリングが鈍く光る。
 ばらけたグラビア、かじりかけのパンにすえた匂いが沁みこん
だ部室から逃げ出し、青いフェロモンが酸欠をさそう金曜の夜のGIG
抜け、校則違反のアルバイトで流す汗の匂い。それが男をイラつか
せる。
 鼻先でニルヴァーナを口ずさむ。
「金何に使うんだよ」履いてる作業靴には鉄板が入っている。
「チケット代っす。ジュピター行きの」
「へぇアメリカ?どの辺」マジで訊ねてくる。
「上のほうです」
「じゃあ寒いぞ。オレはギター。リッケンバッカーの12弦」
 男に子供がいることは他のバイトから聞いてい知っていた。
 搬入車両が積荷を降ろし走り去ると目の前に深夜の甲州街道。
 男のナルシズムをかけてのチキンレースが走り出した。

子守唄 (詩) (2003年06月03日 (火) 14時57分)

深夜のコンビニで
いらっしゃいやせ いらっしゃいやせ
呼び込み風のアクセントが
店に小さな笑いをおこす

いらっしゃいやせ いらっしゃいやせ

おむすび一コ
一缶のコーヒー
立ち読みで帰る金の無い日も
いらっしゃいやせ いらっしゃいやせ

仲間はずれ
家を出た夜
星がふるえた情けない日に

いらっしゃいやせ いらっしゃいやせ

バイト募集の張り紙のあと
今は思い出の中耳をすます
ときどきまねてつぶやきながら
いらっしゃいやせ いらっしゃいやせ

ある貧しい青春の
夜をあやした子守唄

記憶の旅 (詩) (2003年05月28日 (水) 21時42分)

北の町をめぐる旅の途中
峠の麓に町の抜け殻
ひとつの時代が
力尽きて

スロープにそって
伸びていた暮らし

剥がれたペンキ
草に眠るレール
供えたような黄色の花が
あたり一面取り囲み

自生していた花ではありません
マイクロフォンのつぶやき

子供が駈けていた土地に
しっかり張られた根
今は花の王国
海では
かって漁で賑わったという湾で
魚が水と遊ぶ

食卓 (詩) (2003年05月05日 (月) 22時52分)

おろしたての新聞が
パリッと鳴った朝や
焼きたてのトーストは
ガジッガジッと
音を奏でたことのあるテーブルで
今は
まどろみの寝息の音だけが
夕どきの牢獄より
僕をいざなう

夜へ 夜へと・・・

ART SCHOOL (詩) (2003年05月24日 (土) 19時35分)

ベラスケスのメチエ 門外不出
ゴッホのパッション 紙一重
ポール・セザンヌ マッチョなカエル
ロートレック ペイン・ペインター

モディリアーニ モンパルナスの恋人
アンディ・ウォホール 贋金づくり
キース・へリング 地下鉄の王様
裸足の塊多 今じゃお宝

パブロ・ピカソ アヴィニヨン幾何学
イブ・クライン 青に青
J.M.W・ターナー スピードスター
ART SCHOOL 出たとこ勝負

沁みるテレビン 溶けるレアリテ


SILVER BULLET (詩) (2003年05月23日 (金) 16時48分)

ボニィ!
ネバダァの砂の上でボーダーはもう霞んで見えない
エースのフォアカードに
トリッガーでコールすると
あの山羊野郎が現れた
名はレオナルド
22枚のカードの使い手で
俺がヒットしたのが18
今は身包みはがされ額には深手
落ち合うのはブロッケンの峰で
合図に
お前の22口径に特製の銀の銃弾をこめ

あの青い月を撃て!!

びっこの騙馬とスペードのウエイトレス
ゲームのけりをそこでつけよう

レジスターブルース (詩)(2003年05月23日 (金) 16時43分)

ママと来た少年は
コナンを全巻まとめ買い
レジをあらかた乗っ取った

スモーク貼ったメルセデス
若いオヤジが週刊誌
領収書とつぶやくと後ろの女が下を向く

早番明けのオネエさん
プジョーで乗りつけ手にしたマルケス
ブックカバーはクロームハーツ文学少女本領発揮

100円足りない何時もの僕は
レジをすり抜けサヨウナラ
リリスのてらす明かりの下
驢馬にまたがり帰りましょ

西国 (詩) (2003年06月13日 (金) 14時28分)

梅雨の合間をぬった平日
古戦場を望むロープウエイ
他の客のいないケーブルカーが
定刻どおり発車する
物言わぬ孫に
やさしく話かけている祖母との
3年前の思い出を乗せて

今までありがとう
ここでさよならだ
上についたら
振り返らずに

物語の海戦の舞台をしのぶと
瀬戸内より湿ったあたたかな風
2002年6月
敗れ果てた一艘の船が
思い出の彼方
どこまでも追われて行った

教科書葬送曲 (詩) (2003年05月10日 (土) 01時20分)

高校やめると決めた日は 教科書家に持ち帰り
川に流しに行きましょう

でも何処かの釣り人に  釣り上げられたら困ります
星印だらけの教科書は  彼女と目が合った数
記録していたものだから 見られちゃちょっと恥ずかしい
だから流すのやめました

やっぱり火葬が一番と  燃やすことに決めたけど
もしも冴えない思い出が ダイオキシンに変わったら
小鳥や花や虫たち    小さい子供が吸ったら
火葬も少し難しい

しっかり紐で結わったら ゴミに出すのが一番だ
漫画や雑誌に並べたら  静かにサヨナラ言いましょう
成仏しろよ 高校生活

ジーザスところが夕方に
紙を貼られた教科書が置き去りにされ残ってる

もしかしたら思い出も  埋葬許可が必要か
それとも 卒業証書とか

行き場を無くした教科書と
仕方ないから学校へ

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